手術室に限らず清潔エリアでは清掃自体が不衛生作業です。そのため、清掃後には消毒作業が必要ですが、費用や時間の観点から清掃と消毒を同時に実施することが多いようです。
しかし、清掃で消毒剤を使用すれば清潔ということにはならない。
清拭中に拭き取った汚染物質が逆に清潔な物品に付着しないよう適切なタイミングで雑巾を交換しなければならない。このタイミングを間違えると、一見清潔に見える環境も逆に清掃前よりも不衛生になる可能性がある。
血液汚染は目で確認しやすいが、日和見感染につながる汚染物質は目では確認がしにくい。確認しにくいからこそ、清拭する順序・雑巾の適切なタイミングでの交換・各清掃用具の役割を正しく理解し、清潔度を維持していかなければならない。
手術室全体の基本的な清掃順番として、あらかじめ血液・体液等は次亜塩素酸ナトリウムやアルコールで消毒・拭き取りし、無影灯のアーム部分・機材・器材・棚などの埃を取り、低水準消毒剤で無影灯・ベッド・機材・器材・棚などの清拭し、床の清掃をする。次の手術時までには完全に乾燥させる。
院内感染対策を考える上で注意が必要な箇所の清掃方法
無影灯
手袋・手・前腕部・衣類が清潔な状態で清拭する
清潔で毛羽がでにくいをダストクロス使用する
→清潔で毛羽がでにくいを雑巾を使用する(2015年12月29日訂正)
機材・器材
コード・チューブが床面に付着している場合、コードは床と同等の不衛生扱いにし、そして毎日清拭する
キャスターも床と同等の不衛生扱いにする
足台
足台は床と同等の不衛生扱いにする
1枚のダストクロスで3~5の足台を清拭するとかなり汚れるので、汚れるたびに新しいダストクロスに変える
→1枚の雑巾で3~5の足台を清拭するとかなり汚れるので、汚れるたびに新しい雑巾に変える(2015年12月29日訂正)
清潔な手袋と雑巾に変え、2度拭きする(2015年12月18日追加)
床
血液・体液などの汚染された箇所に次亜塩素酸ナトリウムやアルコールを使用し消毒・拭き取った後、床表面のゴミ・埃を取り、洗浄剤または低水準消毒剤で床表面のウェットモップを掛ける
※床表面のゴミ・埃の拡散に注意する
注意点
1ヶ月~数ヶ月の間に天井・フィルター・壁等を清掃し、埃・汚れをためないようにする
次亜塩素酸ナトリウムは金属に使用すると錆びる可能性があるため使用に注意する
上記の“院内感染対策を考える上で注意が必要な箇所の清掃方法”は一般的な病院でおこなわれている清掃方法ですが、床の清掃の“床表面のゴミ・埃の拡散に注意する”については徹底されていないように思われる。
床表面の埃の集め方・処分の仕方は院内感染対策にとても重要なことです。床表面には多くの埃が付着している。床は一部分でも不衛生に扱わなければならない。手術室全体の床の埃をかき集めた埃はその数倍~数百倍もの不衛生さを持っている。まずはその不衛生さの認識を頭に入れることから始めることが重要です。
フロアダスターシート(床の埃を集めるシート:総称)作業中は埃の塊を移動させている。床にはコード・チューブ・その他いろいろと置いてある。それらをフロアダスターシートで接触させることは埃の接触であり、菌の接触である。接触で伝播が起こる。それを回避するためにもフロアダスターシート作業時は何にも接触させてはならない。仮に落ちているペンなどに接触させてしまった場合には流水で洗う。コードに接触したらコードを清拭する。医師や看護師も床に置いてあるコードや管は不衛生扱いにする。
使用したフロアダスターシートを外す作業では埃が舞うことも想定し、人がいないスペースでシートを外す。
外したフロアダスターシートは他のゴミと混合しないように個別にビニール袋に入れ、袋を縛り、ごみ入れに捨てる。もしくは誰の手にも触れないように管理された場所に持っていく。その後必ず前腕部・手を流水で洗う。
この場面で手洗いを怠ると、床に付着していた多くの埃・菌を拡散させてしまう。
例えば、通常の床の清掃では次にウェットモップ掛けです。このウエットモップ掛け中に医療機器や点滴スタンド・椅子・机等に接触し、床の埃や菌を伝播させてしまいます。ですので、このフロアダスターシートの処理後の手洗いは院内感染防止にはとても重要な役割を果たしています。
使用したフロアダスターシートを他のゴミと混合しないよう廃棄する目的は、何かと医療現場ではゴミ入れから間違って捨ててしまったものを探すことが多い。その探し物をしているときに不衛生なフロアダスターシートがあると、探し物をしている人やその周辺を不衛生にしてしまうためです。
感染対策のポイント
- 清掃工程の不衛生な作業の見直し
- 床の埃のコントロール
- 清掃スタッフや看護助手の手洗い方法とタイミング
- 手術室内の器材の清拭順序(清潔な物から不衛生な物へ)
- 清掃用具の清潔管理
- 床に置いてある物を不衛生扱いにする (例えば、スリッパ・シューズカバー・靴入れ・キャスター・足台・フットスイッチ・電気コード・医療チューブ)