1.【床の埃はどのように環境表面へ伝送するか】
清掃員にとって床清掃は一番のメイン作業です。
床表面の埃を取り、次に消毒液でモップ掛けをする。または、床表面の埃取りと消毒液でのモップ掛けは、一つの専用のシートで同時作業する場合もある。
病院の床は、一部分でも不衛生であると考えられている。
よって、部屋全体の床は、さらに不衛生です。
床が不衛生といっても、正しく伝えると床表面にある「埃」が不衛生なのです。
そんな埃は不衛生であるとともに、浮遊・接触移動も可能です。
床表面埃取りシートは、部屋全体の床を清掃する過程で、移動性の高い大きな不衛生の集積物を作ってしまう。
この不衛生の集積物が環境表面に伝送し、医療関連感染を引き起こす。
環境表面への伝送方法(1)
清掃員は常に手(手袋)が乾燥しているわけではありません。
時には水回りの清掃作業をし、時にはクロスに消毒液をスプレーするなど、手が濡れる場面は少なくない。特に濡れた手は、水の張力により微小物を付着させやすい。この場合の微小物とは、床清掃で集積させた床表面の埃も含まれる。
そして濡れた手により、環境表面に微小物を伝送させる。
微小物に含まれる病原菌は、濡れた手から得た水分により、環境表面での生き残り・増殖が簡単になる。
環境表面への伝送方法(2)
常に清掃員と行動を共にする清掃カートは、汚れが集積しやすい。特に床表面の埃は一番の汚れの要因です。
通常、一日の清掃が終了すると、清掃カートは室温が安定した病院内で保管される。場合によっては通気性の悪い狭い倉庫で保管される。
そうした環境に加え、液体を頻繁に出し入れする清掃カートは、湿気が多く、病原菌の生き残りや増殖につながりやすい。
清掃時にこのような清掃カートを使用することで、環境表面への微小物・病原菌の伝送が起こる。
特に濡れた手は、水の張力により微小物を付着させやすい。
2.【洗濯済みのクロスやモップは完全に消毒されているわけではない】
使用済みのクロスやモップは、通常、次亜塩素酸ナトリウムで消毒し、再利用される。
この場合の消毒効果は、あまり期待しないほうが良い。
消毒が不十分な可能性がある上、保管方法が適切でない場合がある。
まれに、洗濯物の乾燥が不十分な時がある。
例えば、環境表面を清拭するときに、完全に消毒されていないクロスに消毒液をスプレーして濡らすとします。このときの中途半端に濡れたクロスは、環境表面に消毒が不十分でクロスに付着していた病原菌を伝送させることができる。
3.【清掃カート内の清掃道具の配置】
清掃カート内に収まっている道具の配置が正しくない場合がある。
未使用品と使用済み品が交差しないようになっているか。
道具が多すぎて通気性が悪くなっていないか。
清掃カートに汚れが蓄積される配置になっていないか。
1.【床の埃はどのように環境表面へ伝送するか】の解決策
〇棚や机上の埃よりも量・質ともにはるかに不衛生な床表面の埃。床表面の埃を処分した後は、確実に手袋を交換します。(床表面の埃を集めるシートが使い捨ての場合、それを捨てる場所は、確実に人の手が触れない場所にする)
〇水回りの清掃の後は、確実に手袋を交換します。
〇清掃カートが病原菌の温床になっていると、清掃時に病原菌を拡散させているのと同じです。清掃カートは、毎日、使用後にアルコールで消毒し、完全乾燥させます。また、消毒する順番は清潔な道具からおこないます。
〇清掃時は自分が気付かないうちに手が不衛生になっていることが多い。ですので、清掃過程で病室の備品に手で触れたところは、清掃最後に消毒液で拭き取る。
2.【洗濯済みのクロスやモップは完全に消毒されているわけではない】の解決策
〇クロスやモップはスプレーで濡らすのではなく、消毒液が入った容器に入れ、確実に浸す。または、洗濯済みクロスではなく、使い捨てアルコールタオルなどの既製品を使用する。
3.【清掃カート内の清掃道具の配置】の解決策
〇不必要な道具は取り除き、管理しやすいようにする。
〇未使用品と使用済み品を交差させない。
〇使いやすさよりも清潔さを優先して配置する。